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白蓮れんれん [… 国内作品(恋愛)]


白蓮れんれん (集英社文庫)


◇ ◆ ◇ あらすじ ◇ ◆ ◇
 大正天皇の従妹にして九州の炭鉱王の妻、大正の閨秀歌人、柳原白蓮。一代で財を成し、炭鉱男あがりの寡黙さと凄みを持ちながらも文化を理解しようとしない夫に倦む彼女の前に、学生・宮崎龍介が現れ、不倫の恋の末に逃避行を図る。大正時代の大スキャンダル「白蓮事件」を題材にした伝記小説。

◇ ◆ ◇ 感 想 ◇ ◆ ◇
 林真理子は好きな作家だった。そう、過去形なのだ。エッセイも軽妙で面白かったし、昔の作品は女の心の襞を書かせたらぞくぞくするほどウェットで痛いほど尖っていた……のにさ、年月は残酷。いつ頃からなのか、何かスカスカしてる割にHの描写だけが濃く多く、しかし扇情をモヨオスほどのねっとり感がなく、ただひたすら猥語を並べているような酷い小説になってしまった。このHシーンって何がしたいの? 何が目的? エロス? リビドー? 全くもってダメ、作者が入れ込んで書いてないエロなんて、こっちが恥ずかしい。

 懐古で申し訳ないが、昔の小説はよかった。特に女同士の心理や思惑をさらりと書きながらも印象的に刺していくような文章が物語にも引き込んでくれたし、登場人物にも気持ちを沿わせて読むことができた。そのうち書くと思うけど、「ミカドの淑女」「戦争特派員」「本を読む女」などは本当に素晴らしいと思う。

 で、「白蓮れんれん」である。これはよかったほうの林真理子w 白蓮(作中では本名の燁子)の期待や失望や倦怠や抑圧、龍介が登場してきてからの不安や喜び、そんな感情にぴったりと寄り添うような気持ちになる。龍介と白蓮の書簡を元にしているとあるが、手紙のほうは何か印象が薄い。それよりは書簡の二人のやり取りなどから浮かんできただろう情景が、前半は孤独、後半は懊悩と共に脳に織り込まれてくる。

 書けるんだよなぁ、こういう文章が、こういう物語が。林先生の時間、戻ればいいのに。

 余談だけど、作中(主に前半)登場する短歌はすごく綺麗なのに絶叫に聞こえる。白蓮さんの短歌をもっと読みたくなった。
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女人源氏物語 [… 国内作品(恋愛)]


女人源氏物語  1 (集英社文庫)


◇ ◆ ◇ あらすじ ◇ ◆ ◇
 あらすじいるのかな、これ……千年の古典、日本が世界に誇る王朝文学、大河小説の開祖でもあり今もさまざまな現代語訳や新訳やら解釈やらで世に出続ける「源氏物語」。それぞれの女君に焦点をあて、女君のモノローグで源氏を再構築した瀬戸内寂聴版・源氏物語。

◇ ◆ ◇ 感 想 ◇ ◆ ◇
 まず原作について。中学や高校の授業でやってそれっきりという人もいるだろうけど、わざわざ本のブログを探している人は割りと読書が好きゆえに源氏もあらすじくらいは知っているだろうという前提の下に話を進めるとして。

 源氏の読み方や感じ方は人それぞれにあるだろうとは思う。私は一人の男をめぐる女君それぞれの苦悩や心のよじれを噛み締めながら読むもんだと思っていて、好きなキャラ(笑)は葵上と女三宮と六条御息所だ。自分でもうすうす気付きながらもプライドを折ることが出来ない女、アホ扱いされていた少女がようやく幼いながらも自我に目覚める過程、そして離れなくてはと理解しながらも心に逆らえない苦しみ。
 時を越えても苦悩の本質に変わりはなく、心のよれ方も大差ない。小道具や状況はさすがに現代と違うから、随分悠長かつ直結なところはあるとは思うけど。

 これを女君たちの視点から語らせるという手法で、より深く丁寧に掘り下げているのがこの女人源氏である。今まであんまり好きなキャラじゃなかったり、描写がひどかったりで読み飛ばしていた帖も見直すきっかけとなった。田辺聖子版の新源氏も大好きだけど、こういう源氏の遊び方を見せてもらえると嬉しい。「常夏」の近江の君のとこが泣ける。

 いろんな訳が出ていて源氏はどこから手をつけてもいいんだけど、ただしこの本は最初に読むべき本ではないと思う。何度か田辺聖子版や円地文子版なんかを読んで、大体の人間関係や立ち位置を何となく理解できるようになってからの本だと思う。
タグ:源氏物語
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