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太陽の子 [… 国内作品(児童文学)]


太陽の子 (角川文庫)


◇ ◆ ◇ あらすじ ◇ ◆ ◇
 神戸生まれの少女ふうちゃんの両親は沖縄の出身で、「てだのふあ おきなわ亭」という下町の沖縄料理屋を営んでいる。天真爛漫で素直なふうちゃんだが、お父さんのノイローゼをきっかけに、戦争と沖縄について調べはじめる。少女の成長に沖縄戦の悲劇をからめた児童文学。


◇ ◆ ◇ 感 想 ◇ ◆ ◇
 6月23日は終戦記念日である。ただし、沖縄の。昭和20年6月23日(1説によると22日)、沖縄本島のほぼ南端にあたる摩文仁で当時の司令官だった牛島中将(階級は当時)が自決した日で、組織的戦闘の終了した日として沖縄県では県の条例で休日としている。毎年摩文仁の平和祈念公園では式典が行われ、菅首相も参列している。
 沖縄戦の悲惨や悲劇についてはちょっと検索すればいくらでも出てくるので割愛する。まぁ沖縄観光のついでに戦跡もよかったら見てってください。ただし、初日限定ね。絶対に空港へのアクセスが便利だからって最終日にいれないほうがいい。ひたすらへこむ。ひめゆりの塔なんて大してどぎついものは何もないのにトラウマになるほどへこんだ。ヘッコヘコである。しかし見たほうがいい(笑)

 ふうちゃんの周りの大人は優しい。その優しさの根を沖縄にやや強引に結びつけるあたり、若干辟易しなくもない。説教くさいというご意見もあるはずだし、「沖縄は素晴らしいところ、沖縄の人たちはみんな優しくていい人たち、だからそれを破壊した沖縄戦は最悪の悲劇」という論法には「え、広島・長崎や東京大空襲は悲劇じゃないの? あと沖縄の美化はやめよう?」と呟きたくもなる。
 また、沖縄出身者への差別に言及している。ふうちゃんと出会い触れ合うことで、ようやく人を信じられるようになったキヨシ少年のエピソードのなかに、「これだからオキナワはダメだ」と吐き捨てられるシーンがあるのだ。キヨシ少年は不良に片足突っ込みかけていたのだが、それも沖縄出身者に対する冷たい扱いが根本にあるというようなことが書かれている。沖縄=絶対的被害者、の図式もかなりお腹いっぱいだ。
 が、沖縄の悲劇を少女の視点から語る手段としては(そして児童文学としては)そんなものだろう。ここまで極端だとすがすがしいし、子供に「戦争はいけない」「差別はいけない」と訓戒たれるにはよいと思う。

 ふうちゃんのお父さんのノイローゼの原因も沖縄戦にあり、お店に来る常連さんたちも人には話さない深い傷を負い、傷と共に罪を感じ、罪を背に貼り付けてなお、生きている。本当の強さとは傷を受け止め、逃げ出さずに向き合うことだという強いメッセージを感じる。
 真実心を打つのはこっちのメッセージ性のほうで、正直沖縄賛美にはあまり賛同できないのだが、それにしても人間の優しさの定義に関しては色々なことを感じる本だ。

 人の強さとは何か。弱さも愛おしく感じるのは何故か。優しいとは何か。

 感動したか? の問いには大きくうなずきながらこう答える。

 電車の中で読むな! 泣くから!
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